着物の基礎知識

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人間国宝から贈られた「仙台平」が話題! 染織分野の人間国宝

着物の基礎知識

フィギュアスケーターの羽生結弦選手が2018年7月2日、国民栄誉賞授与式に出席しました。フィギュアスケートの衣装とはまた違った、凛々しい袴姿が記憶に新しいという人も多いと思います。

授与式で羽生結弦選手が身に着けたことで一躍話題となったのが、仙台平(せんだいひら)。実はこの仙台平は、人間国宝である甲田綏郎(こうだよしお)さんから贈られたものです。このニュースを聞いて、着物にまつわる人間国宝に興味を持った人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、羽生結弦選手に仙台平を贈った甲田綏郎さんをはじめ、着物に関連の深い染織分野で人間国宝に認定されている方々をご紹介していきます。いったいどんな人が人間国宝に認定されているのでしょうか?

そもそも人間国宝って何?

※画像は、能楽のイメージ。

 

人間国宝とは何かということを知るためには、まずは「無形文化財」について知る必要があります。無形文化財とは、価値のある建造物や美術品が重要文化財に指定されているように、歴史的、芸術的観点から価値がある演劇・音楽・工芸技術などを国が認定する制度のこと。

「無形文化財」のなかでも重要なものは「重要無文化財」とされ、その保持者または保持団体を「各個認定」「総合認定」「保持団体認定」いずれかの方式で認定しています。このうち「各個認定」されている人たちのことを「人間国宝」と呼んでいるのです。つまり、「人間国宝」は「重要無形文化財の保持者」を指す通称です。

重要無形文化財は、「芸能」と「工芸技術」2つの区分に分けられます。芸能区分にあたるのが、雅楽、能楽、文楽、歌舞伎、組踊、音楽、舞踊、演芸分野。一方、工芸技術区分にあたるのが、陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、手漉和紙です。

このうち今回、羽生結弦選手に仙台平を贈った甲田綏郎さんは、「染織」分野の重要無形文化財「精好仙台平」の保持者として認定されています。

どんな人が人間国宝に認定されているの?

※画像はイメージです。

 

2018年1月1日現在、染織分野では、15名が「各個認定」され、7団体が「保持団体認定」されています。ここでは、いわゆる人間国宝である各個認定されている人や、その人が保持する重要無形文化財についてご紹介していきます。

羽生結弦選手に仙台平を贈った、甲田綏郎さん

まずは、冒頭でもご紹介した甲田綏郎さん。仙台出身の染織家で、2002年に重要無形文化財「精好仙台平」の保持者として人間国宝に認定されました。父親の甲田栄佑(こうだ えいすけ)さんも人間国宝で、親子2代にわたり、人間国宝に認定されています。

仙台平
その名の通り、宮城県・仙台市でつくられる絹織物で、高級袴地として知られています。植物染料を使って染め上げられた仙台平は、独特の光沢や触り心地があります。

「紬織」の人間国宝 志村ふくみさん

志村 ふくみさんは、「紬織」分野の人間国宝に認定されている染織家。随筆家としても知られ、「一色一生」「語りかける花」などを出版し、大佛次郎賞や日本エッセイスト・クラブ賞を受賞しています。娘の洋子さんも染織家、随筆家として活動しています。

紬織
紬織(つみぎおり)とは紬糸を使った絹織物。紬織の着物は、フォーマルな場面には相応しくなく、カジュアル着物として着るのが一般的です。

三越のショッピングバックをデザイン! 森口邦彦さん

森口邦彦(もりぐち くにひこ)さんは、甲田綏郎さん同様、親子2代に渡り人間国宝に認定されている友禅作家です。「友禅」分野の人間国宝に認定されています。

代表的な作品として知られているのが、三越のショッピングバックのデザインになっている「白地位相割付文 実り」。リンゴをモチーフにした特徴的な幾何学模様を、目にしたことがあるという人も多いのではないでしょうか。

友禅
友禅とは、布を染める技法のこと。糊と染料を用いて染め上げる友禅は、300年の歴史があり、辻が花染めがルーツと言われています。

【認定予定】「江戸小紋」で3代連続認定! 小宮康正さん

最後は、秋に認定予定の小宮康正(こみや やすまさ)さんをご紹介。2017年に亡くなった「江戸小紋」の人間国宝 小宮康孝(こみや やすたか)さんの息子で、2018年秋に父親と同じ「江戸小紋」の人間国宝として認定される予定です。

実は、小宮康孝さんの祖父も「江戸小紋」の人間国宝であり、小宮康正さんが人間国宝として認定されれば、初めて3代連続で同じ分野での人間国宝に認定されることになります。

江戸小紋
小紋の一種で、遠目で見ると無地に見えるような細かな柄が特徴。「通し」「鮫」「霰」などさまざまデザインがあり、ものによってはフォーマルな場面で身に着けることもできます。

他にも染織分野の人間国宝はたくさん

今回は一部の染織分野の人間国宝をご紹介しましたが、他にも人間国宝に認定されている人は多いです。

 

  • <染織分野の人間国宝>
  • 有機織物……喜多川 俵二さん
  • 羅、経錦……北村 武資さん
  • 紋紗……土屋 順紀さん
  • 友禅……二塚 長生さん など全15名

これまであげた人間国宝の人たちは、現在も活躍されている人ばかりです。そもそも、人間国宝は生きている人に与えられる認定なので、亡くなると認定が解除されます。そのため、かつて認定された人間国宝を合わせると、染織分野で人間国宝だった人はまだまだ大勢います。

どんな人が人間国宝だったのか、どんな着物が重要無形文化財に認定されているのか、調べてみると面白いかもしれませんね。美術館や博物館などで人間国宝がつくった着物を展示していることもあるので、興味がある人はお出かけしてみてはいかがでしょうか。

重要無形文化財に指定されている織物は?

※画像はイメージです。

 

これまで、重要無形文化財の保持者をご紹介していきましたが、ここからは、染織分野で「保持団体認定」されている織物を見ていきましょう。

大島紬に江戸小紋!全国各地にある着物の産地をご紹介」でもご紹介しましたが、高級絹織物として知られる「結城紬」は、重要無形文化財に指定されている織物の一つ。「本場結城紬技術保持会」が保持団体として認定されています。

他にも、沖縄・久米島でつくられる「久米島紬(久米島紬保持団体)」や、芋麻糸を使ってつくられる「宮古上布(宮古上布保持団体)」なども、重要無形文化財に指定されている織物です。また、着物を染めるのに用いる「伊勢型紙(伊勢型紙技術保存会)」という伝統工芸用具も、染織分野の重要無形文化財に指定されています。

このほか、「小千谷縮・越後上布(越後上布・小千谷縮布技術保存協会)」「久留米絣(重要無形文化財久留米絣技術保持者会)」「喜如嘉の芭蕉布(喜如嘉の芭蕉布保存会)」が染織分野の重要無形文化財の指定を受けています。

※()内は、重要無形文化財、保持団体名

 

どれも伝統技術を受け継いだ、日本を代表する織物です。着物初心者にとっては耳馴染の無い、織物もあったかもしれませんが、どんな織物なのかチェックしてみると、新しい発見があるかもしれませんよ。

人間国宝は、着物分野だけじゃない!

※画像は、歌舞伎座です。

 

現在114名もの人が認定されている人間国宝(各個認定されている)。今回ご紹介したのは、人間国宝のなかでも着物に関連のあるごく一部の人たちです。

私たちも知っている人だと、歌舞伎役者の坂田 藤十郎さんや、坂東玉三郎さんも人間国宝に認定されています。歌舞伎や能楽など、着物でお出かけするのにピッタリな伝統芸能に携わる人たちが人間国宝に認定されていますから、この機会に他の分野ではどんな人が認定されているのか調べてみるのも面白いかもしれませんよ。

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