振袖と留袖の違いって?知っておきたい着物の種類
洋服を着ているときはあまり意識することのない「着物」の細かな違いですが、私たちが普段着ることに多い洋服にTPOがあるように、着物にも種類によって着る場所が異なる「格」の違いがあります。
そこで今回は、気になる着物の種類や格の違いについてご紹介。着物の種類や格を知ると、和装をより一層楽しめるようになりますよ。
着物の種類とは?
ここで紹介する着物の種類は、全部で8つ。西洋のイブニングドレスに当たる「留袖」やちょっとしたお出かけにピッタリな「小紋」など着物にはさまざまな種類があります。
洋服と違い、パッと見は似たような見た目をしているものも多く、最初のうちは混乱してしまいがちですが、どんな特徴があるのかを知ると、それぞれの違いが見えてきます。
また、見た目の違いはもちろんですが、「格」の違いも注目してほしいポイントの一つです。格の違いを知ることで、自分が着物を着たいシーンでどんな着物を選択すればいいのかがわかってきます。
既婚女性の最も格式高い着物「留袖」
既婚女性が着る着物のなかで、最も格式高いとされるのが「留袖」です。留袖には、黒留袖と色留袖の2種類があり、どちらも袋帯と呼ばれる帯を結びます。
「黒留袖」は、その名の通り、黒い色をした留袖のこと。結婚した女性が第一正装として親族の結婚式や仲人として出席するときに着用します。
背中の中心、左右の後ろ袖、胸元の計5つの場所に家紋が入り、裾には鮮やかな模様が描かれているのが特徴です。
一方「色留袖」は、黒以外の色を使った留袖のことを指します。以前は既婚女性だけが着るものとされていましたが、現在では未婚の女性でも着ることがあるそうです。
5つの家紋が付いたものは、黒留袖と同様の扱いとなり、親族の結婚式などで着用しますが、家紋が3つや1つのものは、友人の結婚式などにも着用できます。
長い袖がかわいらしい「振袖」
「振袖」は、結婚をしていない若い女性が身に付ける第一礼装です。袖の部分がほかの着物に比べ、長くなっているのが特徴で、その長さから「大振袖」「中振袖」「小振袖」の3つに分けられます。
袖が長いほど格式が高いとされ、大振袖は花嫁衣装として花嫁が着ることでも知られています。
また、現代で振袖というと、成人式の衣装というイメージが大きいですが、親族や友人の結婚式や格式高いパーティーなど未婚の女性ならば、さまざまな場面で身に付けることが可能です。
既婚・未婚に関わらず身に付けられる「訪問着」
留袖や振袖とは違い、結婚している、していないにかかわらず着ることができる着物です。
肩から裾につながるように描かれた美しい絵羽模様が特徴で、女性が着る礼装の一つとされていますが、留袖よりも格は下がります。友人の結婚式やパーティーのほか、お子さんの卒業式や七五三といったハレの日に着ていくことができる着物です。
一見すると色留袖と同じような見た目をしているのですが、色留袖は上半身に柄が入っておらず、訪問着には袖にも鮮やかな模様が入っています。どちらの着物か判断に迷ったら、上半身の模様をチェックしてみるといいでしょう。
全ての柄が上を向いている「付け下げ」
略礼装の一つである付け下げは、訪問着とほぼ同じような扱いの着物であり、出かけられる場所にも大きな違いはありません。華やかなものは結婚式や入園式、シンプルなものであれば、ホテルの会食や観劇鑑賞などと幅広い場所で活用できます。
訪問着と似たような見た目をしていますが、縫い目をまたぐようなデザインがないのが特徴です。
なかには、訪問着のような縫い目をまたいだデザインのものもあり、そういったものは、付け下げ訪問着と言われています。
いろいろな場面で使うことができる「色無地」
黒以外の柄のない着物のことを指します。家紋を入れた場合は、訪問着や付け下げと同等の扱いとなり、家紋が無いものは普段着としても着用可能です。
カジュアルからセミフォーマルまでさまざまな場合に対処ができる着物なので、あらゆる場面で活躍してくれるでしょう。また、暗い色合いのものならば、お通夜や法事などにも対応できますよ。
葬儀や告別式で着用する「黒喪服」
「黒喪服」は、お葬式や告別式の場などで着ることになる服です。喪に服す場では、この黒喪服に黒喪帯を付けたものが第一礼装となります。
下着の付け方や着用する時期など地方によってしきたりに差があるので、着用する前によく確認しておいた方が良いでしょう。
おしゃれ着として大活躍「小紋」
全体に細かな模様が描かれた着物です。上下関係なく柄が入っているため、基本的に礼装や正装としてではなく、外出着として着用します。友人とのお出かけや旅行・お買い物などにピッタリの装いです。
ただし、江戸小紋は、小紋のなかでも格式が高い装いとされる着物なので、ほかの小紋とは異なり、フォーマルな場面でも着用できます。
織り着物の一つ「紬」
反物にするときに加工する留袖などとは違い、糸を染めてから織るオシャレ着用の着物です。
全国のさまざまな場所で生産されており、茨城・栃木で作られる「結城紬」や奄美大島で作られる「大島紬」など非常に高価な種類もあります。
「結城紬」は、国の重要無形文化財にも登録されている着物で、全行程が手作業で作られています。ただし、高価なモノとはいえ、オシャレ着なので、フォーマルなシーンでの着用は控えた方がいいでしょう。
日本の夏の風物詩「浴衣」
花火大会や夏祭りで見かける夏の風物詩とも言える「浴衣」ですが、もともとはお風呂上がりに体についた水分を拭う目的で作られた和服です。通常帯には、半幅帯や兵児帯を用いることが多いですが、最近では簡単に着付けができるようにと造り帯などが付いた浴衣も登場し、より気軽に和装を楽しめるようになっています。
帯の種類にも違いがある!
着物と同様に帯にもさまざまな種類や格の違いがあります。結婚式などで着物を着る場合、格の高い着物と帯を合わせる必要があるので、帯を選ぶときは、よく確認をするようにしましょう。
いろいろな場面で使える「袋帯」
長さが4m20cm以上ある帯で、フォーマルからカジュアルまで幅広い場面で使われます。
金や銀の糸が織り込まれた華やかなものは留袖などの礼装に、二重太鼓や飾り結びなどをして使うのが定番。金銀の糸を使わない洒落袋帯は、お出かけなどに使うことができます。
名古屋で作られたことに由来する「名古屋帯」
約3m60cmの帯で、名古屋で考えられたことから由来し、その名前が付けられました。
袋帯とは違い、カジュアルな場面で使う帯なので、留袖など格式高い着物に合わせるのには向きません。格のあるものであれば、色無地や付け下げなどと合わせ、入学式などにも着ていくことができます。
カジュアルシーンで大活躍!「半幅帯」
浴衣をはじめ紬などカジュアルシーンで着用する着物に合わせることができる帯です。
帯の幅が短く、いろいろな結び方を楽しむことができます。カジュアルな場面で使われる帯なので、ドレスコードのあるホテルなどでの食事などでの活用は避けるようにしましょう。
いかがでしたでしょうか?
着物を着るなら知っておきたい格の違い。一見すると一緒に見える着物も、よくよく見ると模様や袖の形などが違います。
最初のうちは、どれがどの着物なのか覚えるのが大変かもしれませんが、どんな着物や帯の種類があるのかということを知っていくと、着物を着るのがより楽しくなるはずです。
着物の種類や格の違いなどを学び、TPOに合わせた着物を楽しんではいかがでしょうか?