平安時代のハレの装い! 十二単について知りたい
日本の伝統文化として古くから親しまれてきた、きもの。「日本の伝統衣装! 着物の歴史を学ぼう」では、現代の私たちに親しまれているきものに至るまでの、歴史についてご紹介しました。
きものの歴史が移り変わる中で、平安時代に登場したのが「十二単」です。幾重にも重なったきものの様子を歴史の教科書や、百人一首のイラストなどで見かけたことがある、という人も多いのではないでしょうか。
今回は、そんな十二単をはじめとする平安時代の衣装についてご紹介していきます。
平安時代の衣装、十二単
十二単は、平安時代中頃に登場した衣装です。宮中に仕える女性たちが身に着けていた正装で、儀式やハレの日に身に着けていたと言われています。現在では、ほとんど見る機会がありませんが、女性皇族がお召しになっており、ご即位にまつわる儀式や、ご成婚の儀式の際にその様子を見ることができます。
皇后雅子さまがご成婚された際も、十二単をお召しになられていました。最近では、即位後の宮中祭祀で十二単のような古式装束をお召しになられた雅子さまが話題になりましたが、実はお召しになっていたのは十二単ではありません。一見すると十二単のような装いに見ますが、十二単とはどのようなきもののことを言うのでしょうか?
十二単とは?
十二単は、「唐衣・表着・打衣・五衣・単・裳・長袴」からなる装いが基本。今回の宮中祭祀の際に雅子さまが身に着けていたのは「小袿・表着・五衣・単・長袴」で、基本的な十二単の構成とは微妙に異なります。そのため、十二単ではないということになるのです。
なお、10月におこなわれる「即位礼正殿の儀」では、雅子さまが十二単をお召しになるとみられています。ご成婚の際とは違う十二単の様子が見られるようなので、ぜひ注目してみてはいかがでしょうか?
十二単は、12枚着ているわけではない?
十二単というと12枚の装束を身に着けている様をイメージしてしまいがちですが、必ずしも12枚の衣を重ねて着ているわけではありません。
十二単とは本来、袿(うちき)と呼ばれるきものを重ね着している様子を指す言葉で、12枚のきものを着ている様子を表した言葉ではないとされています。十二単という言葉が誕生したのは、12枚に見えるから、ゴロがよかったから、などの説があります。
平安時代に十二単と呼ばれるきものを着ている人たちも、季節などにより12枚以上の衣を身に着けたり、それよりも少ない枚数の衣を身に着けることもあったようです。
十二単の着付け
十二単の着付けでは、まず長袴を履いてから、単を着ます。その上に五衣、打衣、表着を重ね、最後に唐衣と裳を身に着けることで完成します。十二単は何枚も衣を重ねて着るため、身体にずっしりと重さを感じるようです。平安時代の人が実際に十二単を身に着けていたということを考えると、驚きを隠しきれませんね。
ここからは、そんな十二単を構成する衣服を簡単にご説明します。ぜひ、それぞれの部位がどこを指すのか、イメージしながら見ていってください。
- 唐衣(からぎぬ)
平安時代の貴族の男性の正装である「束帯(そくたい)」にあたるとされる衣で、十二単では一番上に着ることになります。錦や綾などでつくられ、袖や丈が短いのが特徴です。唐服に由来することから、「唐衣」という名称が付いたと言われています。
- 表着(うわぎ)
唐衣の下に着る衣で、五衣の色目が見えるよう小さめに仕立てられているのが特徴です。
- 打衣(うちぎ)
表着の下に着る打衣は、表着より少し小さく仕立てられており、衣紋を調整するのに使われていました。
- 五衣(いつつぎぬ)
袿を5枚重ねた衣のこと。平安時代の人々は季節などに応じ、五衣の色の重ねを楽しんでいました。とくに枚数の取り決めなどがなく、平安時代末より前の時代では5枚以上の袿を着ていたこともあったようです。
- 単(ひとえ)
五衣の下に着る衣で、袿よりも丈やゆきが長くつくられています。
- 裳(も)
腰に巻き付ける衣服で、長い裾を引くようにします。
- 長袴
緋色をした筒形の袴で、裾が長いのが特徴です。
- 大垂髪(おすべらかし)
十二単を着ている女性の写真や絵を見ると、独特の髪型をしていることに気づいた人もいるでしょう。実はこれは「大垂髪」という髪型で、平安時代に始まったとされるヘアスタイル。室町時代や江戸時代にも見ることができ、後ろへ垂らすような形をしているのが特徴です。
十二単をきっかけに、昔のきものの世界に触れてみよう!
今回は、平安時代のハレ着である「十二単」についてご紹介しました。
十二単は、宮中に仕えていた女性たちのハレ着だったということもあり、現代ではなかなか目にすることが少ないです。しかし、歴史を扱う博物館などでは展示をしていることもあります。施設によっては十二単を着てみる体験をおこなっているスポットもあるので、十二単に興味を持ったという人は、ぜひお出かけしてみてはいかがでしょうか?