知っておきたい着物の豆知識!着物用語【ことわざ・言葉編】
「知っておきたい着物の豆知識! 着物用語【着物の部位編】」では、着物の用語をご紹介しました。初めて聞く着物の用語があった方もいるのではないでしょうか?普通に生活をしていると、着物にまつわる言葉はあまり聞き馴染みがないかもしれません。
しかし、普段何気なく使っている言葉やことわざの中には着物にまつわるものがある、ということを知っていますか? 今回は、着物にまつわる言葉やことわざについて、ご紹介をしていきます。
あの言葉も!? 着物にまつわる言葉・ことわざ
着物の言葉と聞くと、少し難しそうなイメージがある人もいるかもしれませんね。しかし、普段聞く言葉の中にも着物が由来のものがあるのです。聞いたことがあったり、知っている言葉があると、グッと着物も身近に感じるのではないでしょうか。
今回は、着物にまつわる11個の言葉やことわざをご紹介します。どんな言葉やことわざがあるのか、さっそく見ていきましょう。
1.辻褄を合わせる
まずは、「辻褄(つじつま)を合わせる」という言葉から。「辻褄を合わせる」には、筋が通るように合わせる、矛盾がないようにする、といった意味があります。普段の生活では、「話しの辻褄を合わせる」といった使い方をされていますよね。
では、「辻褄」とは何のことを言っているのでしょうか? 「辻」は、裁縫の際、縫い目が十字に合っている部分のことを指します。一方、「褄」とは着物の部位のことで、裾の左右両端のことを指します。これらの合うべき部分を指す2つの言葉が合わさったことにより、「辻褄」という言葉が出来あがっているのです。
2.はしょる
「話しをはしょる」といった使われ方をする「はしょる」ですが、実はこれも着物が由来。省略したり、短くまとめるといった意味を持つ言葉ですね。「端折る(はしおる)」という言葉が変化をし、現在のような「はしょる」になったと言われています。
元となった漢字を見ると、なんとなく着物のどの部分が由来になっているのがイメージできるのではないでしょうか? 着物の裾や褄、つまり端の部分を折って帯に挟んだのが、「はしょる」のはじまり。着物の端を折るという言葉が変化をし、省略するという意味にもなっていたようですね。
3.袖振り合うも多生の縁
「袖振り合うも多生の縁」は、道で袖が触れ合うようなささいなことであっても、前世からの縁が元になっているということわざ。着物の「袖」という言葉が使われていますね。同じく袖が使われている「袖の振り合わせも五百生の機縁」も、似た意味を持つことわざです。
「多生の縁」は「他生の縁」という漢字が使われることもあり、どちらも正しいとされています。「袖振り合うも多生の縁」の元になっているのは、どんなささいな出会いであっても大切にするという仏教の教えです。ちょっとした出会いを大切にしたくなる、ことわざですね。
4.帯に短し襷に長し
続いてご紹介するのは、「帯に短し襷(たすき)に長し」ということわざ。あまり耳にしたことがないという人が多いかもしれませんね。「帯に短し襷に長し」という文字通り、帯にするには短く、襷にするには長すぎる、どちらにも使えない状況を表しています。
「中途半端で役に立たない」ことをたとえるときに使うことわざです。似たような意味を持つことわざに、「太郎にも次郎にも足りぬ」があります。
5.袂を分かつ
次は、「袂(たもと)を分かつ」についてご紹介していきます。一緒に行動するのを辞める、ときに使われる言葉ですね。「親友と袂を分かつ」という使い方をされたりしますが、どのような語源なのでしょうか?
そもそも、「袂」とは着物の用語で袖下にある袋のような部分のこと。お金やハンカチを入れるなど、ちょっとしたポケット代わりとして活用する人もいます。「袂を分かつ」は、この袂がくっつくほど親しくしていた人が、別々の道を歩むことが語源とされています。
6.尻を捲る
「尻を捲る(しりをまくる)」は、聞いただけではどんな意味を持つ言葉なのかイメージしづらい言葉ですね。この言葉は、ごろつきが着物の裾をまくってその場に居座ることから生まれたと言われています。
急に荒っぽい態度や喧嘩腰になるさまを表すときに使われます。同じ意味で、「穴(けつ)を捲る」という言葉が使われることもあるんですよ。
7.足が出る
続いては、「足が出る」という言葉。もちろん、足が出ていることそのものを意味する言葉ではありません。「足が出る」とは、予算を上回ってしまうこと、つまり赤字を意味する言葉です。他にも、隠していた物事がばれてしまったさまを表すときも「足が出る」と言います。
「足が出る」の語源の一説と言われているのが、着物にまつわる事柄。着物を仕立てるときに生地が足りずに足が見えてしまっている状態から、「足が出る」という言葉が生まれたと言われています。
8.左前になる
着物を着付けるときは、「右前に着る」ということは着物に興味がある人であれば一度は聞いたことがあるでしょう。左前に着るのは死者が着る死に装束だけで、生者が左前に着物を着るのは縁起が悪いとされています。
このように着物を左前に着る、つまり普通とは違う状態が語源となっているのが「左前になる」という言葉。着物の着方を表す以外に、経営状態や暮らしが悪くなっているさまを表す言葉として、使われることもあります。
9.襤褸が出る
「襤褸(ぼろ)が出る」は、日常生活でも使うことのある言葉ですよね。「襤褸」とは、ボロボロになった使い古された状態の布や衣類のこと。また、欠点や失敗といった意味も持ち合わせています。
つまり、「襤褸が出る」という言葉の意味は、今まで隠していた欠点がばれてしまうということです。着物から隠していた襤褸の部分(=汚れてしまっている部分)が出てしまっている状態から、生まれた言葉と言われています。
10.袖を連ねる
「袖を連ねる」という言葉は、何人もの人が連れだって座っているさまや、一緒に行動をする、といった意味を持っています。たくさんの人が着物を着て座り、「袖」が一列に並ぶ様子が語源となっています。イメージがわきやすい言葉ですね。
類語として知られるのが、「袂を連ねる」という言葉。こちらも「袖を連ねる」と同じく、一緒に行動をするという意味を持ち、語源も「袖」を「袂」に置き換えたものをイメージしてもらえればいいでしょう。
11.故郷に錦を飾る
「錦」とは、さまざまな色の糸を使った織物のこと。また、立派なものや美しいものを指すときにも使われます。
「錦を飾る」とは、立派な着物を着るということが語源。そこから転じたことにより、出生して帰ってきたという意味として使われています。つまり、「故郷に錦を飾る」は、立派な着物を着られるほど出生して、故郷に帰ってきたことを表しているんですね。
まだまだある!? 着物にまつわる言葉・ことわざ
着物の用語と聞くと、難しい印象があるかもしれませんね。しかし、実は普段使っている言葉が着物にまつわるものだったということもあるのです。
今回ご紹介した、着物にまつわる言葉やことわざはほんの一部。まだまだたくさんの着物にまつわる言葉やことわざがあるので、その由来や意味を調べてみると面白いかもしれません。今回は、いつもとは少し違った角度で着物についてご紹介しました。これをきっかけに、さらに着物に興味を持ってくださいね。